第一肋骨へのアプロ-チ
手技・整骨学研究会 田中 正義
【第一肋骨の特異性】 第一肋骨は他の肋骨と違い斜角筋がついている特殊な肋骨です。肋骨は基本的には肋間筋で挙げ 下げされるのですが、第一肋骨のみ上に挙げるための筋肉は肋間筋の代わりに斜角筋が働きます。 また呼吸時、上位肋骨と下位肋骨に運動学的な違 いがあります。下位肋骨は上下運動のみに対し上位肋骨は上下に加え前後方向に可動域を持ちま す。関節の可動域が複雑なほど構造的な障害が起 きやすく、また頭部の重みと頸椎の可動 域を 支える土台としての第一肋骨の観点からも力学的 ストレスが大きいと考えられます。そして第一肋 骨は胸郭上口を構成する骨であり胸郭上口 には 食道、血管、神経等が通り生命を維持するのに重 要な場所です。肩こりと総称される頸椎捻挫の症 状として吐き気、むくみ、呼吸器疾患など解剖学 的位置関係か 頸椎も含む胸郭上口からの影響が 考えられます。
【胸郭出口症候群】 第一肋骨の関与する代表的疾患として胸郭出口症候群があります。頸 肋等を除けば第一肋骨、頸胸椎、肩甲帯のバランスの崩れで症状が起 きます。医学的な発生機序には多くの仮説があります。第一肋骨はよ く観察すると大きく2通りの変位が見られます。いわゆる挙上と下垂 です。言い方を変えると上方回旋位と下方回旋位とも言えます。前述 したように第一肋骨は前後上下に動く関節であり斜角筋と共に首の動 きにも関与しています。手技・整骨学研究会の観点から第一肋骨にダ イレクトアプロ-チすることにより各症状の改善を目的とした治療法 を考案します。
【第一肋骨へのアプロ-チ】
①背臥位 ➊仙骨。仙腸関節L2、4 ❷T7、9,11順次調整 ❸T4,3,2,1 C7,6の棘間を開きながら回旋変位をとる。(特にT2、T1、C7の上下、 左右の調整) ❹第一肋骨の背臥位アプロ-チ C7直下T1において横肋関節から肋骨体への上方よ りアジャスト ②仰臥位 ➊後頭間関節C1~7の回旋変位をとる。 ❷第一肋骨体部へのテクニック第2指外側部にて左右の第一肋骨体部の高低差を触診し 高い方を下方へ圧を加える。 ❸高い方の肋骨に対して、一方の手で(第2指外側全体にて)圧を加えつつ他方の手で 肩関節、肩鎖関節を下げながら律動的に圧を加えて調整する。 *第一 肋骨体に対して第2指外側の接点を脊椎側(後側)より前方に向かって又体部内方 より外方に向かって同時に操作する。
❹その後、胸鎖関節において上方転位の鎖骨端を調 整しつつ第一肋骨(胸肋関節)を調整する。その 後 ❸の動作にて、第2指外側にて左右の確認を行 う。
③横臥位 高い方を上にして、頭部に枕を当て 水平位として❸の動作を行うこと も可能であるので2通りの方法を連動してもよい。 ※第一肋骨の高い側→胸鎖関節において鎖骨も上 位に変位している。鎖骨頭を下方に整圧しつつ、 第一肋骨を整圧する。
④肩関節の下垂している方が第一肋骨も低くなる。 ➊下方の第一肋骨を上げる操作 ②❷の体位にて高い方を押圧しつつ、低い方の 上肢、肩関節を挙上。20~30秒行う。(2.3回)